住宅リフォームのトラブル対策

はじめに

住宅のリフォーム工事を業者に発注したところ,その工事内容が杜撰であったり,思ってもいなかった追加工事代金を請求されるなどのトラブルが発生することがあります。このようなトラブルについて,それを予防及び解決方法等について解説します。

予防策

工事内容の事前チェック

リフォーム工事については,一般消費者と零細事業者との間で契約が行われることが多く,契約書自体作成されない場合もあります。また,契約に先立ち,見積書や設計図書がきちんと作成されていなかったり,作成されていたとしても,数量や材料などの記載のない「一式」での見積書や平面図のみという場合もありがちです。

トラブルを防ぐには,これら契約書,見積書,設計図書について,事前に確認できるものを提供してもらうことが肝要です。

そのようなものがなければ,リフォームの内容を把握することはできませんし,疑問があっても業者に確認することもできません。

最初から業者を疑ってかかることは避けるべきですが,契約前にきちんとした書類を整えてくれない事業者にはできるだけ頼まない方がよいでしょう。

請負代金については,通常,契約時と完成時に分けて支払う契約内容が多いと思いますが,契約時に全額支払うような契約を求めてくる業者には気をつけたほうがよいと思います。契約時に支払う金額の方が大きい場合も要注意でしょう。民法633条は,請負契約の報酬について仕事の目的物の引渡しと同時に支払わなければならないとしています(もちろん,契約でこれと違う合意をすればそれによりますが。)。

見積書の見積内容について疑問がある場合,どこに相談すればよいでしょうか。知り合いに建築専門家(一級建築士や工務店など)がいれば,その方に意見を求めればよいと思います。そのような建築専門家の知り合いがいない場合には,「公益財団法人住宅・リフォーム紛争処理支援センター」の「リフォームに関する電話相談」や「リフォーム見積チェックサービス」を利用してはいかがでしょうか。電話相談は建築士の資格のある相談員が対応してくれますし,見積書や図面を送れば,それを建築士がチェックしてくれます。

後に紛争になった場合に備えて,契約締結までの事業者とのやり取り(最近は電子メールでのやり取りが多いかもしれません。)に関する記録や受領した書面等については,保管しておきましょう。

業者の信頼度チェック

リフォーム工事の検査と欠陥があった場合の損害を保証がセットになった「リフォームかし保険」というものがあり,その保険を利用するためには,その保険を販売する保険法人の審査を受けて登録する必要があるのですが,「一般社団法人 住宅瑕疵担保責任保険協会」のホームページで,そのような登録事業者を検索できます。また,住宅リフォーム事業者団体登録制度というものがあり,国に登録している事業者団体に加入している事業者であれば,より安心できると思います。登録事業者団体及びその加入事業者については,「一般社団法人住宅リフォーム推進協会」のホームページで検索できます。

施主検査

リフォーム工事が完了し,事業者から引渡しを受ける際には,目視となりますが,面倒くさがらずに工事に問題がないかチェック(施主検査)をしましょう。そのチェックで疑問があった場合は,遠慮なく事業者に質問し,回答を得ておくべきです。回答についてはできるだけ書面を要求するようにし,紛争が発生した場合に備えましょう。チェックにより「ダメ工事」があった場合には無償で補修してくれるはずです。

リフォームかし保険

リフォーム工事が完了した後,欠陥が見つかった場合には,事業者に補修や補修費用相当額の損害賠償を請求することになりますが,その際,リフォームかし保険で補修費用が保証されれば,事業者との話し合いもスムーズに行くことが多いと思います。したがって,可能な限り,リフォームかし保険に加入しておくことをお勧めします。

リフォームかし保険は,発注者が契約することはできず,上記の登録事業者に依頼して,保険法人と契約してもらうことになります。保険契約をした場合には,付保証明書などのコピーをもらっておきましょう。

紛争解決手段

住宅専門家相談

リフォーム工事について,工事内容に欠陥があったり,見積になかった追加工事費用を請求されたりした場合には,まず,当事者間で協議して解決することになりますが,既に,請負代金の全部またはほとんどを支払っているような場合には協議は困難な場合が多いです。また,欠陥の有無については建築専門家に助言を求めることが有用ですし,追加工事費用などについては法律専門家に助言を求めることが有用になります。そこで,利用したいのが,「公益財団法人住宅・リフォーム紛争処理支援センター」のリフォーム専門家相談です。相談には予約が必要ですが,弁護士と建築士の2名の相談員による相談を,1時間,無料で受けることができます(再相談は有料となります。)。もちろん,相談ですので,事業者との交渉は本人が行う必要がありますが,弁護士に交渉等を依頼したい場合には,相談担当の弁護士に依頼することも可能です。

訴訟以外の解決手段

事業者との間の交渉がうまくいかない場合は,損害賠償等の請求を諦めるか,訴訟をすることが考えられます。しかし,リフォーム工事の欠陥の補修費用を請求するといっても金額がそれほど大きくない場合が多いため,弁護士に依頼すると費用倒れになるおそれがあります。そこで,本人で行える手続きとしては,弁護士会に設置されている和解あっせん機関(弁護士会ADR)の利用,簡易裁判所の調停の利用が考えられます。前者については,地元の弁護士会に問い合わせれば,申立手続を教えてくれます。通常,弁護士会のホームページにも記載があります。和解あっせんを申し立てる際には,建築専門家に担当してもらえるかを確認すべきでしょう。東京の弁護士会であれば,必ず建築専門家を入れてくれるはずです。これに対し,簡易裁判所の調停の場合は,調停委員に建築専門家が入るかどうかわかりませんが,当事者だけで交渉するより,よい結果が得られると思います。

欠陥が重大で,事業者に対する請求額がある程度高額になる場合には,地方裁判所での訴訟に訴えるほかない場合がありますので,そのような場合には,建築訴訟に精通した弁護士に依頼した方がよいと思いますので,よろしければ当職にご相談ください。

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